ーOWC2014優勝おめでとうございます。
とても嬉しいです、ありがとうございます。夢の様な気持ちです。
ー今のお気持ちを聞かせてください。
(インタビュー前に行われていた)先ほどのスピーチでも言ったのですが、嬉しいという気持ちよりも、すごく寂しい気持ちです。OWCに集まった仲間達と離れなければいけないのは本当に寂しいです。
ーリラックスして打てましたか?
予選1日目はすごく緊張していました。ただその後は集中して打つことができましたね。なので2日目に入ってからは特に緊張は無かったです。
ー今大会、もっとも厳しかったのは誰との対局でしたか?
決勝リーグ準々決勝の伊藤七段の対局です。
ー私もそばで見ていました。終盤非常に複雑な形勢になっていましたが勝ちは見えていましたか?
いえ、全然見えていませんでした。ラッキーでしたね。負けを覚悟していた対局でした。
激戦直後のSong選手と伊藤七段
ー今大会通じて、誰に勝てたのがうれしかったですか?
やはり高梨九段に勝利できたのとても嬉しかったですね。高梨九段と対戦すると、まるでコンピュータと戦ってるような錯覚に陥ります。まさか勝てるとは思ってなかったですが、会心の勝利でした。というより運が良かったのだと思います。
ー日本代表勢と話をしていると、予選1日目が終わった時にはもう「Song Yan選手はとても強い」と評判でした。OWCに向けて相当準備してきたのではないですか?
OWCに参加できると決まってからもしばらくは忙しかったので特にトレーニングはしていませんでした。もちろん大会の数週間前からトレーニングはしていましたが、何か特別なことをしたわけではありません。まさか優勝できるとはまったく思っていませんでした、
決勝戦
ー決勝戦について聞かせてください。まず序盤はどう感じていましたか?
冨永八段が11d3を打ってきた時、少し形勢が悪くなったと感じました。私はこのオープニングはあまり深く研究していなかったためです。
11手目黒d3
その後確実に形勢が悪くなってきたと感じたのが黒a6です。この手を打たれた時「僕は Mr.Tominaga のオープニングトラップに嵌められてしまった!」と感じました。かなり悩みましたね。
23手目黒a6
次の24手目はかなり長考しています。長い時間をかけて「24白g6から28g3」の進行を見つけることができました。実際に読み通りの展開となり少し形勢が良くなったと感じましたね。
24手目白g6
ー日本の強豪の一人である中森六段が「白のg6からg3にかけての打ち回しを見て相当強いと確信した」と言っていましたがきちんと読みきっていたんですね。
はい、長考はしましたがしっかり読んでいました。そしてポイントは31黒d8です。
31手目黒d8
冨永八段にこの手を打たれた後、私は「勝ちがあるのではないか」と感じています。はっきり勝利を確信したわけではないですが、白番だったこともあり少しずつ自信が出てきました。その後の進行もほとんど私が読んだ通りの進行になりました。
ただ44白f1と45黒a8はミスですね。そういったミスがあることを踏まえるとこの対局で私が勝てたのはラッキーだったと思います。
44手目白f1
あなたとオセロについて
ーあなたとオセロについて少し聞かせてください。いつからオセロ始めたのですか?
2004年からです。ちょうど10年ですね。
ーオセロを始めたキッカケはなんでしょうか?
私が持っていたCASIO製電子辞書の中にオセロのゲームがあって、それが初めてのオセロとの出会いです。当たり前ですが、簡単に勝てました。「もっと強い人と対戦したい」と思ったのでインターネットで対局を始めたのですが、まったく勝てませんでした(笑)それから一生懸命オセロの勉強を開始したのです。
ー普段のトレーニングは具体的にどんなソフトを使っていますか?
ZebraとNboardを使ってますね。たぶんみなさんが使ってるアプリケーションと同じですよ。2008年くらいまではかなり深いところまで研究をしていましたが最近はそこまでやらなくなりました。私の妻もオセロをやっているのですが、大会の前には彼女と対局をして調整をしています。
ー終盤のトレーニングでは何か別のソフトを使ってないのですか?Happy Endなど。
いや、使ってないですね。特別に終盤練習はやっていません。
ーFacebookが通じないせいもあって、中国のオセロ事情はいまいち見えてきません。大会などは頻繁に開催されているのですか?
いや、生オセロの大会はほとんど開催されませんね。中国のWebサイトにゲーム広場があるんですが、そこにはいつも2000〜3000人くらいのアカウントが集まります。でもオセロをやってる人はいつも10人くらいしかいません!
ーあなたが尊敬しているオセロプレイヤーを教えてください。
冨永八段です。
(横でインタビューの様子を眺めていた冨永八段がここで「リップサービスですよ」とツッコミをいれて笑いが起きる)
ーリップサービスと言われてますけど(笑)
そんなことないですよ(笑)僕は2007年、アテネの世界選手権で冨永八段が優勝してからずっと尊敬しています。
ーそんな冨永さんに勝てて嬉しかったんじゃないですか?
そうですね、嬉しかったですけど今回たまたまです。まだ冨永八段のレベルには到達できていません。
この大会に行く前に妻から「OWC2014は誰が優勝すると思う?」と聞かれて私は「冨永八段」と即答したんですよ。それくらい私は彼を尊敬しています。ちなみにOWC2013の時も同じ会話をしたのですがその時は「伊藤七段」と答えてました。私は預言者ですね(笑)
人となりについて
ー若く見えますがお幾つなのですか?
1984年生まれの30歳です。
ー職業は何でしょうか
エンジニアです。
ー奥様にOWC優勝を報告しましたか?
彼女はずっとオンラインで観てくれていました。優勝した後に妻が電話してくれたんですが、彼女はとても照れ屋なので「優勝おめでとう!」みたいなことをまったく言ってくれないんですよ(笑)優勝した直後の電話なのに一言目が「電話、つながる?私の声聞こえる?」ですからね。結局最後まで「おめでとう」とは言ってくれませんでした(笑)
ー(録音してくれていた伊藤七段が)Othello Kingの称号は僕からあなたにうつりました!今どんな気持ちですか!!
伊藤さん、あなたは今でも最高のプレイヤーですよ!
最後に
ーWOC2014は参加しますか?
基本的にアジアで開催される世界大会は参加するつもりです。
ー今までWOCに積極的に参加してこなかった理由は何ですか?
やはりヨーロッパまでの旅費がネックです。中国からヨーロッパまでの渡航費はとても高く、なかなか気軽にいくことができません。2006年の水戸で開催されていたWOCは実は参加の権利を取得していました。日本から渡航補助が各選手に出ていましたが、私はその時学生で、そのお金をもらうことができなかったのですね。そのため参加することができませんでした。
ー今後のオセロの目標を教えて下さい。
2〜3年後、日本の名人戦に参加して活躍したいと思っています。
ーおお!今年ももうすぐ開催されますよ。もし招待されたら参加しますか?
実は今妻が妊娠中でして、ちょうど今年の3月が出産予定となっているのでさすがに家をあけることはできません。子供が生まれて2〜3年すれば落ち着いてくると思うので、その時日本の大会に参加してみたいとは思っています。
ーこのインタビューはたくさんの日本人プレイヤーが読みます。日本人オセロプレイヤーに向けてSong選手からメッセージをお願いします。
日本のプレイヤーにお願いしたいことは「オセロを今後も継続的に続けて欲しい」ということです。日本はプレイヤーがとても多く、強い人がどんどん出てきます。ただ、一時期活躍してもすぐにオセロをやめてしまう人がかなり多いと感じています。どうか長く続けてくれることを心から祈っています。
2014年1月18日
マリーナ・ベイ・サンズ OWC2014 ビクトリーディナー会場にて
通訳:劉 彦平氏