いよいよ開催目前となった第40回オセロ世界選手権。全日本を制覇した長野七段、現世界チャンプ・王座の高梨九段、そして王座戦2位で代表権を獲得した三屋七段に集まってもらい、来る世界選手権への意気込みや展望などを語ってもらった。

そこには「絶対に勝たなければいけない」という気負いのようなものはなく、自然体のまま代表について語るリラックスした雰囲気が伝わるだろう。聞き手として末國九段も加わり、オセロ世界選手権に関する様々な情報を語ってもらったロングインタビューとなった。

まもなく開催

今日は集まっていただきありがとうございます。さて、水戸で開催されるオセロ世界選手権まであとわずかとなりました。WOCの代表になってどんな気分ですか?

三屋:ヤバイっすよね(笑)日に日に事の重大さに気づき始めてますよ。


友だちやご家族には言いました?

三屋:はい、言いました。「え?え? 日本代表??」って驚かれました。「40回記念大会での日本代表だから、負けたらおれめっちゃ叩かれる」って言ってます。

高梨:そういえば会社で「今年のオセロ世界選手権が水戸で開催される」とは言っていないのに、水戸での開催のことを知ってる同僚がたくさんいたんです。長谷川会長がお亡くなりになり、ニュースになったことで水戸開催を知った人が多いんですよね。

三屋:水戸での開催はびっくりされますよね。僕はふだん塾講師のアルバイトをしてるんですが、同僚の先生には日本代表になったことを伝えました。「オセロ?しかも日本代表?なんで急にそんなことになってるの??」と言われてます。あなた達が知らないだけで僕は10年以上オセロやってるんですよ(笑)





海外の注目プレイヤー


今回もたくさんのプレイヤーが海外からやってきます。みなさんの注目選手を教えて下さい。

長野:誰が要注意の選手とか全然知らないです。みんな教えてください!僕まったく調べてないです!

三屋:
(参加選手リストを見ながら)見た感じ…そこまで圧倒的な実力をもった選手というのは居ないと思います。実力は拮抗してます。ミケーレ・ボラッシもいないですし。最近の外国人選手で強いのは、ベン・シーリィ、オランダのニッキー・ヴァン・デン・ヴィゲラーですかね。それから中国のソン・ヤン。強いと言われていますけど、棋譜が少ないんです。ちなみに8勝以上しそうな人をリストアップしてるんですが、他にはジャッキー・フー。意外といくんじゃないかと。あとボラチェック。そしてフランス代表の柏原さん。

高梨:あー、柏原さんは強い!

三屋:それからフランスのアルナウドさん。イムレ・リーダー、イタリアのマルコーニ。この辺りの中堅プレイヤーは侮れないですよ。それからオデガ選手。

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高梨:そうそう!オデガは強い!ほんとに強い!!今年の優勝候補の一人ですよ。

三屋:そしてアルチュールくん。ピアナット、ブライアン・ローズですね。僕がリストアップしている選手は。ヨーロッパの選手は棋譜がたくさんあるのでめちゃくちゃ見ています。

長野:海外選手の対策、まとめたら僕に教えてください(笑)その対策通りに、そのまんまやって勝つんで!

三屋:役に立つのであれば(笑)まあでも棋譜見てるだけだよ。あと、縦取りなのか斜め取りなのかとか。

長野:あー、斜め取り嫌い!斜め取りなんて人間のやることじゃないよ!

三屋:そういえばロエル・ホボ選手のこと忘れてた。強いですよ。

高梨:そうなんだ?去年当たったけどそこそこだった記憶が…。

三屋:アムステルダムの大会で、ニッキー相手に三番勝負で勝って優勝しているんですよ、彼。谷田七段が「品川シーサイドオープンで安定的に5勝できる」と絶賛していました。

長野:品川安定5勝って、調子いいときの僕ですよ(笑)めちゃめちゃ強いじゃないですか。

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末國:
あとジョアンナ・ウィリアムズも強いね〜。

高梨:世界レート見たんですけど、中国代表のYongzhi Langって誰ですか!めちゃくちゃレート高いんですけど。ソン・ヤンが中国代表の二番手ってどういうことなの(笑)

長野:ソン・ヤンより上ってことは、相当強いでしょうね。

高梨:中国代表は3番手の選手も大会の出場経験が少ないらしく、情報がなくて不気味なんですよ。


高梨くん、意外と海外の選手情報も見てるんですね。

高梨:代表に決まったら必ず見ますよ。

長野:へ〜、見るんだ(笑)


長野くんは個人の対策はあまりしてないんですね。

長野:しません。誰が相手でも同じなんで!


強気だ。

長野:栗田くんに「対策してるの?」って聞かれたんですけど「まあどうにかなるでしょ」って言いました(笑)「絶対対策しないと駄目だよ!」と怒られましたね。

三屋:ヨーロッパの選手に関する研究はかなりしています。それくらいしないと僕はやばいです!


高梨くんは?

高梨:今までの世界選手権でもそうでしたが、僕は個人対策というのはしないんです。決勝トーナメントいって初めて相手が決まるじゃないですか。そこで初めて個人対策をしていますね。

末國:じゃあ、いつも2日目終わった後に研究してるの?

高梨:してます。PlayOKやLIVE Othelloの棋譜を見て、黒白それぞれの対策をしています。

三屋:僕はずーっと、精一杯研究してやっと決勝トーナメントに入れるかどうか、なんですけどね(笑)

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WOC予選について

予選は13Roundありますけど、皆さん何勝くらいできそうですか?

長野:10勝かな!対日本人で1つ負けて、あとシーリィにはまず勝てないです。僕、シーリィみたいにわけわかんない序盤打たれるの苦手なんです。あれは無理ですね。それともう一つどこかで負けて10勝3敗ですね。今回は参加人数が多いので10勝3敗はボーダーラインかな。通過できるかどうか怪しいと思います。

末國:普段は9.5勝でプレーオフに進出できるんだよね。でも、今年は参加人数が多いので、9.5勝だと通過どころかプレーオフも難しいかもしれない。

長野:まじか〜(笑)

三屋:今のままだと予選は……9勝ですかね。僕、ちょっと中盤が怪しいんですよ。皆さんご存知のとおり(笑)で、変な取りこぼしがなくて、きちんと中盤を打ち回すことができれば10勝はできるかも、と思っています。でも…下手したら「勝ち越しをかけて最終戦を迎える」みたいなこともありそう!

末國:今回は日本開催なので、その点はアドバンテージじゃない?

高梨:僕、今回の世界大会は前日まで仕事なんですよ。(※前日に休み取れたようです)。いつもは事前に3日くらい観光したりしてるんですが、今年はそうもいかないのでその点がちょっと不安かも。


WOCで、強い選手が意外なプレイヤーに負けることもある気がするんですが、あれは疲労が主な原因だったりするんですか?

高梨:疲れ、というよりも、それは見ている人が世界を見くびっています。毎年本当にレベルが上がってますし、見ている人は「日本人選手楽勝!」と思ってるみたいですけど、毎試合勝つのはすごく大変ですよ!

三屋:怖いなあ…

長野:僕海外の選手全然知らないんで、毎年組み合わせとか見ていて「誰だこのプレイヤー」って思うことはしょっちゅうです。なんで日本代表の選手が負けるのかわからない、みたいな。


心理的なプレッシャーとかもありますか

高梨:うーん……例えばベン・シーリィと対局するときは気合入ってるけど、無名の選手と対局するときは「休憩ポイントかな」みたいに思ってしまうことがあって、それで足をすくわれることはありますね。

三屋:いやー、そうなんだ!なかなか未知数の世界ですね。

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海外の選手から見たら、「三屋って誰だ?」みたいな雰囲気になってるんですかね。

三屋:僕、2013年のパリオープンに参加しているんですが、その時は6勝5敗でした。で、あの時(今回スイス代表の)アルチュール・ジュニィエくんに7石にされました(笑)彼からしたら「なんであんな雑魚が日本代表になってるんだ」って思ってるはずですよ(笑)

高梨:彼、強いですよ。僕も去年のWOCで負けました。


長野くんは取りこぼしをするイメージあまりない気がするんですが。

長野:中盤まで普通に負けていることはあるんですが、終盤で逆るっていうのが多いです。中盤弱いんですよ〜。わりと終盤力でどうにかしています。


それぞれのイメージ

それぞれ抱いているイメージを教えてください。

長野:僕、じゃんぷさんのこと本当に尊敬してるんです。全然崩れること無いし、わけのわからない手って絶対打たないじゃないですか。研究量とか言われがちですけど、地力が本当にありますよね。研究も、相手の仕掛けにハマらない程度の研究はしてると思うんですけど、ちゃんと相手に勝ち切る力があるのがすごいですよね。でも、WOCでじゃんぷさんに当たったら勝ちますよ!


高梨くんから見た長野くんはどんな感じ?

高梨:2〜3年前はそうでもなかったんですよ。だけど最近長野くんのブログを読んで「え…こんなに研究してるんだ」って思ったんですが、その頃からですかね。品川の大会で勝ちまくるようになりましたよね。

長野:去年くらいから頑張りはじめました。時間に余裕がある大学生のうちにタイトルに絡めるようにならないともう一生絡めることはないだろうな、と思って真面目にやりはじめました。それで強くなって。勝ち試合は確かに粘って粘って勝つことが多いんですけど、負けるときは自分のミスでポロッと負けちゃうことが多いんです。だから安定性には欠けてると思います。


三屋くんと長野くんの関係性は?

三屋:長野くんは賢いですよね。印象としては、それこそ以前は自分が本気出せば勝てると思ってたんですけど、その後真面目に頑張ったんだろうなと思いますね。最近勝ちまくって代表になりましたけど「なるべくしてなった」という感じです。


高梨くんの印象は?

三屋:高梨くんとは本当に相性悪くて本当に苦手なんです。

長野:僕は三屋さん、かなり苦手なんですよ。最近でこそ勝ってますけど、以前はかなり負けてました。

三屋:序盤に凶悪なハメ方して勝ったことあったよね。

高梨:そうそう!三屋さん、最近序盤本当に強くなりましたよね!そういう序盤を見てから三屋さんは「僕の要注意リスト」に加わりました。

長野:僕はいわゆる「研究タイプのオセロプレイヤー」にほんと苦手意識あるんですよ。

三屋:全国大会だとみんな変な手を打たないじゃないですか。普通に行こうとするから、僕の研究範囲にハマってくれることがあるんです。王座戦のときも、中盤でめっちゃ有利になってそのまま逃げ切る、みたいなことがありました。そういう対局がWOCでもどれだけできるか、にかかってるところはあります。

高梨:WOCはね、定石通りにいかないことが多いんですよほんとに!海外の選手、変な手ばっかり打つんです。

三屋:そういうの苦手だな〜(笑)結構外してきますよね。

高梨:Play OKで対局していてもそれは感じますね。そういうのって、ちゃんと対処すればこちらが優勢になるはずなんですけど、きちんと対処できなくなったときに一気に泥仕合になってしまうことがあるんです。そんな展開になると海外の選手は強いですね。

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そういえば全員20代ですね。

高梨:日本代表勢もずいぶん若返りましたよね。僕ももう気づいたら中堅です。2012年WOCも僕、栗田くん、岡本くんが代表で若かったんですけどね。三屋さんはオセロ歴だいぶ長いですよね。

三屋:小学6年生からなので、もう12年やってます。神奈川ブロックで「高梨悠介」という強い中学生が出てきたのも、見ています(笑)僕と高梨くんは同い年なんですよ。当時僕はけっこう話しかけてたんですけど、全然僕のこと相手にしてくれなかったですね〜。

高梨:待って待って!そんなことないから!全然覚えてない

三屋:「あ〜、やっぱり僕のこと眼中にないんだ」って思いましたね(笑)その頃から高梨くんの次元は違いましたね。僕は地道に長くやって、10年くらいやって五段になる、みたいな感じです。


とはいえもう七段。

三屋:いやー!来るところまで来ちゃいましたね!


六段の権利を複数回得て七段の資格を得たと思うんですが、もう七段の申請はしました?

三屋:ちゃんとしました。七段です。でも、六段の権利って何回とっても六段な気もしますよね(笑)

長野:僕は全日本選手権で優勝したのでちゃんとした七段です!あとバス王座にもなったので二冠です!


現世界チャンピオンからのアドバイス

WOC初参戦の長野くん三屋くんのために、高梨くんからアドバイスをしてあげてください。

高梨:予選通過の方法、とかですか?それとも決勝トーナメント?

長野:決勝でいいです!予選は普通に通過するんで!

高梨:末國さんもオセロニュースで以前書いてましたが、「出場者のグルーピング」をして、負けていい数を見積もっておくことが大事だと思います。例えば、ソン・ヤンやベン・シーリィといった「予選通過が見込まれる出場者のグループから1敗していい」みたいに事前に見積もっておくと、思いもよらないところで敗戦してしまった時とかであっても焦らずに済みます。心理的な余裕が出ます。

末國:あの記事を書いていた本音は、「予選通過は難しい」ということなんだよね。1敗してしまうと「もう負けられない」と焦るんだけど、それはだめ。引きずらないこと。焦らないこと。

高梨:WOCってけっこう連敗するんですよね。去年もアルチュールくんに負けた後、次の対局で柏原さんにも負けたんです。

末國:そうそう。2014年バンコク大会で僕は初日7-0だったのね。「これ余裕だな」と思ってたんだけど、Round8、9で連敗してRound10の相手が岡本九段。これはやばい(笑)何とか引き分けてホッとした。

高梨:予選の3.5敗はかなりヤバイんです。今年人数多いので、3.5敗だと落ちるかもしれません。

長野:色々話聞いてると中国代表は怖い気がしてきた。

高梨:中国は怖いよ。団体戦も上位にきそう。

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では高梨くんから長野くんへ、ご希望の「決勝のアドバイス」をお願いします。


長野:お願いします!

高梨:3位決定戦がんばって!おれ決勝いくから!

長野:いやいや、じゃんぷさん1位通過で僕が2位通過にしましょう!で、決勝戦で対戦しましょう。

末國:決勝はどっちの色を取るかも重要だよね。例えば村上さんは白番が大好きなんだよね。で、白が大好きだから、3番勝負の一局目は「黒番」を選ぶんだって。なんでって聞いたら、「仮に1局目負けたとしても2局目が白になり、そうなれば勝てる」と思ってるらしい。で、為則さん。為則さんも白が好きなんだけど、1局目はかならず白番を選ぶ。理由は「3番勝負では、一局目を落とすということが致命傷になりかねないから」ということらしいんだよね。

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高梨:
僕も為則さんの考え方を支持しています。

長野:手番ってどうやって決めるんですか?

高梨:予選上位の人間が決めるよ。2局目は逆の手番になって、3局目は1局目、2局目の石数合計が多い方が手番を決めます。

末國:ちなみにね。以前決勝でベン・シーリィと対戦したとき。1局目僕が8石負け。2局目は僕が8石勝ち。同数になったとき、3局目は「予選上位者が手番を決め、かつ引き分け勝ち」の権利を持つんだけど、ベン相手に、引き分け負けで黒番はさすがに勝てないわ(笑)予選通過順位は大切なんだよね。


長野くんは黒番が好きなんだっけ?

長野:僕は黒白どっち持っても勝てるんですけど「引き分けが嫌い」なんです。黒番を持つ時は「引き分け勝ちで準備」しているんです。「あ〜これ人間が普通に打つと引き分けになるな」っていうのを想定して進行を準備しているんです。だから「引き分けあり」は本当に嫌い。


じゃあ、もし決勝トーナメントの1局目、色を選べるとしたらどっちを取るの?

長野:うーーーーん…(長考)、白…かな!いや、白を取るけど、僕は黒のほうが圧倒的に勝ちやすいんですよね〜〜〜。


朝早い対局ですけどそれは大丈夫?

長野:僕最近睡眠がヘタなんですよね。3時間寝てすぐ起きて…というのをいつも繰り返しています。あ、そういえば(インタビューの9月23日時点で)僕まだホテルまだ予約しないんです!僕ホテルとか予約するの本当に苦手で。

末國:水戸のホテルの空き状況、いま見てみようか。

長野:もし空いてたらそこ予約してください!僕どんなクソなところでもいいですよ!

末國:水戸駅から徒歩30分のホテルとかあるけど(笑)

長野:そこでもいいです!朝ポケモンGOしながら会場いきますよ!


三屋くんから高梨くんに聞きたいことは?

三屋:負けた時にどうやって立ち直りますか?僕は一度負けると引きずっちゃうんですよね。どうやって立ち直って、まとめていくか?を世界を知る人に聞きたいです。

高梨:正直にいうと、僕はそれヘタです(笑)さっき言ったとおり、WOCの予選は連敗することが多くて。「1敗してもいい」と計算して焦らないようにするんだけど、気持ちの上では切り替えてるつもりなんだけど、それでも引きずって負けることがあります。僕の方が立ち直り方教えて欲しいくらいです(笑)

長野:連敗は怖いですね。僕、第一感が本当に悪くて。たくさん読まないとちゃんと打てなくて、ときどきどうしようもない負け方をすることがあるんですが、そうやって形勢を損なっていき、弱い第一感で打ってしまいさらに負けがこんでいく、みたいなのもありそうなですよね。


長野くんからは?

長野:割と真面目に聞いておきたいのは、30分持ちのことです。時間配分みたいなのはあらかじめ決めてますか?

高梨:一切決めてない。僕は「考えたい時に」時間を使うことにしている。ブライトウェルポイントはかなり重要で、取れるんだったら石はしっかり取るようにしたほうがいいよ。

長野:石を多く取るのは得意だから大丈夫!

高梨:いやほんと重要だよ(笑)最終戦終わって9勝が4人並ぶ、みたいなこともあるからね。その時ブライトウェルポイントが低いとプレーオフにも行けないからね。

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30分持ち、長く感じます?


高梨:30分持ちは短いですよ!みんな持ち時間長いって思いますよね。でも、終盤には絶対に持ち時間が無くなってるんですよ。仮に「1時間持ち」でも同じだと思います。

三屋:「20分持ち秒読みあり」と比較すると?

高梨:秒読みは正直あまり使いたくないんですよ。返し忘れのリスクも考えなければいけないし、30秒で数え切るのもなかなかつらいものがありますからね。

末國:「30分持ちだから終盤に時間残しておこう」と思っても、中盤で時間使っちゃうんだよなあ。

高梨:中盤で着手候補を比較してもよくわからない局面があるじゃないですか。20分持ちだと割り切って着手しちゃうところもあるんですが、30分持ちの時は考えちゃうんですよね。そうすると、終盤時間がなくなることが多くなりますね。

長野:普段の大会とは緊張感違いますよね。普段の大会では気が緩んでおしゃべりしちゃうこともあるんですけど、WOCでは喋れないですよね。というか僕英語全然話せないし(笑)

三屋:僕も英語全然だめです。

長野:僕、ほんと笑えないくらい英語できなくて。


オセロプレイヤーから代表選手に質問

Twitterで、事前に「代表選手に聞いて欲しいこと」を募ったんですね。そこで寄せられた質問にいくつか答えてもらいます。まず初めは「3人のお金事情について教えてください」ですけど、なんですかねこの質問は(笑)

三屋:僕はいま大学院生ですが、さっきも言ったように塾講師のアルバイトをしています。

長野:僕はたまにイベントスタッフやってます。今年バイトでロックインジャパン・フェスに行きました(笑)

高梨:客で行ってました。会わなくてよかった(笑)僕は「逆転オセロニア」というDeNAさんが出しているスマートフォンアプリ関連で色々とお仕事をいただくことありますね。

三屋:いいな〜僕なんかボランティアばっかりですよ!

高梨:ちなみに僕はオセロでトータル150万円くらい稼いでます(笑)WOC4回優勝で120万円くらい、あと京都オープンとかスーパーリーグの賞金とか合わせるとそれくらいになります。WOCに出られなかった時期は稼げなくなったのでバイトしたんです。遊ぶお金がなくなって。

長野:お金欲しいです!僕、全日本選手権で優勝したあと10万円もらったんですけど、すぐ旅行いってお酒飲んで使い切っちゃいました〜。

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そうえいば皆さん、もし優勝したら「優勝賞金の使いみち」はどうしますか?


長野:飲み代に消えますね。あと、半年くらいロシアに旅行にいきたいです。第二外国語ロシア語を選択してるんですが、寒い所が好きなんですよ。ロシアへの素敵イメージすごいです。僕は貯金とかできない人間なので、一瞬で使い果たしますね。


長野くんはお金がかかると強いのかな。

長野:決勝トーナメントまで進出できれば、もう目の前にWOCの優勝賞金がぶら下がっているので目がギラギラしますよ〜!とにかく決勝トーナメントまでには何とか進出したいです。実際優勝は厳しいかもしれないけど、無くはない。事前の準備がうまくいって、相手と噛み合うような対局になれば勝負になるはずです。

三屋:仮に優勝したら、しばらくそのお金には手を付けないでしょうね。少なくとも「夢じゃない」という証で置いておくと思います。

高梨:残すわけでもなく、パーッと使うわけでもなく、生活費です(笑)徐々に消えていきますね。

長野:じゃんぷさん、なんで世界タイトル何度も取ってるのにそんなに夢がない感じなんですか?優勝賞金のことを絶対「収入」としか思ってないでしょ!

高梨:OWCの賞金は、増やそうと思ってカジノ行ってすぐに消えました。


ひどい(笑)

高梨:そういえば今回は団体戦も賞金が出るらしいですよね(※真偽不明です。たぶん出ません)。

三屋:え!そうなんですか……!僕で取りこぼすわけにはいかない…やばい…

長野:賞金、勝ち数で按分とかじゃなくてちゃんとみんなで等分にしましょうね!

高梨:団体戦のトロフィーって3つしかないんです。なので、賞金もたぶん「日本代表全員の中から上位3人がもらう」という形になるはずで、ここにいるメンバーが必ずもらえるわけではないかな。

長野:よーし!めっちゃがんばろ!


次に「WOCの前日の過ごし方」について教えて欲しいという質問があります。これは高梨くんに聞きたいですね。

高梨:考えすぎない方がいいと思ってて。海外のとき、いつも前の日は観光しています。翌日のことは考えないでリラックスしている。その状態で参加すると調子いいですね。為則さんとか中島さんは観光の時からピリピリしてるらしいんですけどね。

末國:僕の場合は、一週間前は悩んでピリピリしてるんだよね。「予選落ちしたらどうしよう」と不安になるんだけど、前日になったらもうテスト前と同じで「どうにかなる!」という気分になるかな。始まると「あ、意外と勝てるじゃん」となる。

高梨:へ〜、僕は全然ピリピリしないんですよね。直前にバタバタしても変わらないんです。「それまでの積み重ねで今があるんじゃん」と考えています。

長野:じゃんぷさん、発言に貫禄を感じる!

三屋:4回世界チャンプになってるんだぞ、貫禄あるでしょ(笑)

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他にも面白い質問が。「ゲンかつぎ」はしますか?


高梨:僕、実はするんですよ。ゲンかつぎ。赤いパンツを履きます。赤は良いんですよ。インターネットオセロでも「赤レート」って一番強いですし(笑)けっこうこだわります。あと、対局が終わってトイレにいったとき顔をバッと洗うんですよね。で、次の対局勝ったとするとまたトイレにいって顔を洗う、というのを続けますね。

長野:僕はゲンかつぎとか一切しないんですけど、環境が変わると寝るのがヘタなんです。王座戦のときも1時間くらいしか寝られなかったんですよ。それが不安です。だから生活リズム整えることくらいですかね。

三屋:飲み物、チョコレート、ラムネ菓子を常備していますね。ラムネ菓子が一番ブドウ糖が多いんですよ。まあ、理屈じゃなくて気持ち的な部分もあります。実際にそれらを口にするかどうかは別として。心の取っ掛かりになるかな、という気はしています。

高梨:予選1日目、2日目、決勝トーナメントの3日目に着る服は出国前から決めています。とにかく余計なことを考えたくないんですよね。ちなみに3日目はメディアの取材があって写真にうつるので一番良い服を着ます(笑)


次の質問です。WOC用に準備している「進行」はありますか?

高梨:ありません!まあ一つくらいは準備するかもしれないけど、今まで勝ってきた進行で勝ちます。急に変えても良いことないんですよ。日本の選手と対局するときは研究されてることが多いんですけど、海外の選手は今まで使ってきた進行でも通用することが多いんです。

三屋:まあ、はっきり言ってこの時期にそれ聞かれてべらべら喋るわけはないんですよ(笑)ちなみに僕の場合は、序盤の研究が「生命線」なんです。王座戦でそれがうまくいったというのもあるので、引き続き準備はきちんとして臨みます。それでどこまで通用するか。

長野:進行ですか?僕はWOC直前の10月後半になったら、序盤の知識が圧倒的な(中部の)清水五段に良い進行を聞きます。あとるるさんに聞きます。清水五段とるるさんに進行を聞いて、それをうまく調合します。

末國:ほんとに?

長野:うそです。EDAXに聞きます(笑)


みんな研究には何を使ってるの?

長野:僕はEDAXです。

三屋:僕もEDAXですね。

高梨:僕はWZebraです。BOOKは以前くるさん(佐々木七段)にもらったものを今でも使っています。使ってるPCのマシンスペックが低いこともあって、WZebraの方が軽くて良いんですよね。

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次の質問は実にオセロっぽい。中盤のときの着眼点、黒番と白番でそれぞれ何を考えて打つべきなのか教えてください。


高梨:中盤なんですけど、黒か白かで意識を変えることはないんですよ。とにかく中盤の導入では強引な手を打たない、中盤の終わりに差し掛かる頃にはしっかりと終盤を睨んで構想を立てるんです。自分のオセロは「中盤が生命線」だと思うんですよ。

長野:わかります!じゃんぷさん、中盤の「見える速度」が圧倒的ですよね。

高梨:まわりからは暗記プレイヤーだと思われてるみたいなんですけど、最近序盤の暗記は浅いですよ。中盤で少しうまく打てるから勝負になってます。

三屋:高梨くん、全然中盤で時間使わず打ってくるよね。第一感で綺麗な筋が見えてるんですよね。

高梨:第一感で打っちゃうことは多いです。中島さんが作っていた「研究COBRA」がやっぱり自分の中盤の評価値の原点で、それが今でも自分の中に残ってます。

長野:僕は中盤が苦手なので、「中盤を発生させない」ようにしています。「序盤終えて即終盤」みたいなの目指してて。僕は感覚が本当に悪いので、終盤も「最後まで読み切る」ようにしないと勝てないんですよ。なので、なるべく考え始める局面を遅くしたいんです。そして、るるさんも同じような思想を持ってるんですけど、本当に勝ちにいくときは「外れたら極端に自分が有利になる確率が高い」進行を準備する感じです。

末國:今回の参加者で序盤に明るいのは誰だろう。

高梨:即答でピヤナットです。序盤は圧倒的です。あとソン・ヤンも明るいです。ベン・シーリィは明るいというより、わざと外してくるんですよね。

三屋:黒か白かで変わってきますよね。黒のときは工夫しないと勝てないので、逆偶数に持ち込んだり連打を狙っていく構想を立てる必要があります。中盤から終盤に入る段階で、何かしらのポイントを持って打つようにしなければいけないと思っています。


さすがオセロ教室の先生。模範的な回答ですね。

三屋:ただ!本音としては研究を深くして序盤で押し切りたいと思っています。そういう「楽して勝とう」と思うような人間はこの場にいちゃいけないような気がするんですけど(笑)ちなみに「中盤を発生させない」ような序盤を打ってると、相手が外してきたときに「突然終盤になる」ような局面が出てくることもあるんです。残り20手くらいをしっかり読みきらなければいけないので、そういうときは終盤力が試されるんです。

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日本のプレイヤーと海外のプレイヤーのレベルの差について教えてください。

高梨:まだ差はあります。だた、毎年WOCに出るたびに海外の選手のレベルが高くなっきていると感じます。以前は「世界で優勝するよりも日本でタイトルを取るほうが難しい」みたいなこと言われてましたけど「最近それも違うな」と思います。ベンやソン・ヤンといった世界タイトル経験者はもちろん強いんですけど、ニッキーやデイビッド・ハンドといった中堅どころの底上げもすごいんですよ。それで、予選突破のボーダーラインがすごく高くなってると感じます。あと2〜3年したら、日本人選手が誰も決勝トーナメントにいけない、みたいなことが起きてもおかしくないです。

長野:海外、全然知らないんです。正直よくわかんないんですけど(笑)海外選手と打ったことほとんどないんです。ネットオセロもほとんどしたことなくて。WOCの棋譜とか見るんですけどよくわかんないじゃないですか。世界レーティングも統一された指標じゃなくて何か怪しいし。そういう意味では割と楽しみです。

三屋:パリオープン行きましたけど、だいぶ旅行気分でした(笑)6勝5敗でしたけど、外国人選手と対局してみて「自分が万全の状態だったらもっと打てる」と感じることができました。柏原さんはガチガチで打ってきて、そのまま中盤で押し切られました。そういう情報が自分に入ってきているので、そういう部分ではアドバンテージがあるかなと思ってますね。


しかしこの対談、かなり面白いですね。中島八段も参加したいと言っていたんですが、オセロ教室の講師で来られないと。「三屋くん、おれと代わってくれないかな」って言ってた(笑)

三屋:そういえばオンラインオセロ教室は最近上倉六段が講師に加わって、僕が上級者レベルの解説もするようになってきたんです。そうなると「自分の考えをアウトプットする」機会が増えてきたんですね。自分より下か、同じくらいのレベルの人に、自分の考え方を説明するようになったんです。それで強くなったところはありますね。しかも毎週やる機会をもらえてるんです。お金払ってでもやりたいな、と。

長野:言葉にするの大事ですよね。

三屋:そう!「言葉で体系化する」というのは強くなる上でとても大切なんです。長野くんのブログもそうですが、「ブログを書く人は強くなる」んですよ。すりっぱさん(中森六段)がブログを書き始めて一気に六段まで駆け上がったのが印象に残ってて、そういうことがやっぱり大切なんだと思いますよ。


最後の質問です。「世界戦あるある」があったら教えてください

高梨:ん〜、世界戦あるあるか…。なんだろうな。そうだ、WOCって「同窓会の雰囲気」があるんですよ。前回会ったプレイヤーと会えて「久しぶり」みたいな。ベンクトさんとはもう会う度にお互い抱き合ってますね。

末國:ペアリングで、一回戦からものすごいカードが組まれることがある。去年は「ピヤナットvs伊藤七段」みたいな対局があったり。本人たちは嫌だろうね〜。見てる周りは面白いけど(笑)

長野:僕、面白くなりたくないな〜。つまらなくていいな〜。つまらない勝ちが欲しいな〜。

高梨:WOCは対局が組まれた時点で自分の手番が決まるんです。で、例えば日本代表がみんな一回戦「黒番」だったとするじゃないですか。そうすると、その人達はしばらく対局がないんです。「しばらく日本人同士は当たらないな」と安心するんですよ。そういう見方もあります。


最後に

WOCの意気込みをお願いします

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高梨:
優勝して為則さんの記録(7度の世界チャンプ)に近づきたい、というのはあります。そして、実はしばらく世界チャンピオンは日本人が続いているんです。それは途絶えさせたくないな。特に団体は日本11連覇くらいしてるんですよ。

長野・三屋:うわああああああ!プレッシャーがあああ!

高梨:団体は何も心配していないですけど(笑)

長野:睡眠に…睡眠に負けそうだ…

高梨:あと、ソン・ヤンとの対局が楽しみです。OWCで彼に負けてるんですよね。そして今回初めてWOCでの対局。決勝では対局したくないけど楽しみです。

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長野くんは?

長野:ベスト4は普通の調子ならいけるんです。ただ、実は僕、結構緊張しいなんです。なのでちょっと怪しいかもしれないけど…。決勝はバスの中でやりたいですね(笑)WOCは30分持ちということもあるので「恥ずかしい試合」はできないな、と思っています。このWOCに賭けてますし、なるべく恥ずかしい試合をしないようにしたいです。最近ころっと負けちゃうことがあるんですよね…。

末國:強くなってる時って、そういう「恥ずかしい負け方」をする時あるんだよね〜。

長野:そうなんですよ!最近そういうのが多いので、しっかり修正して時間を使って、そして決勝トーナメントには行きたいと思っています。実力通りにいけば、決勝トーナメント進出は何とかできるはずです。

高梨:本音は?

長野:絶対優勝します!(即答)優勝ですよ!!常に優勝狙ってますよ。


ブログも楽しみにしていますね。

長野:ブログに何も書くことがないような、しょうもない対局はしたくない。普段からオセラーには見てもらってると思うのですが「読者にとって有益な、良い棋譜を残そう」といつも思っている。WOCでもそういう試合ができたらいいな、と。

高梨:本音は?

長野:本音は「楽して勝ちたい」です。ブックで勝ちたいです。


三屋くん、お願いします。

三屋:僕がここにいること自体光栄なことでもあり、そして違和感もあると思います。ただ、この3人の中ではいちばん「オセロの普及に貢献」してると思っています(笑)それを踏まえて、社会人になる前にご褒美をもらったと思っています。もちろん日本代表として恥ずかしい試合はできないし、できることはすべてやって臨みたいと思います。今から一ヶ月ちょい、死ぬ気で頑張ります!

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